2020年下期、通信業界はドコモのahamo(アハモ)の誕生により激変する。
au、ソフトバンクなどのMNO各社は、ahamo(アハモ)の登場で新ブランドを次々と立ち上げ、若者層を取り込もうと躍起になっている。
この余波はおそらく「格安SIM」で人気が高いMVNO各社(日本通信,イオンモバイル,UQモバイル,BIGLOBE)さえ飲み込み、通信業界全体で月額の通信量や通信料金の大改革が行われると思って間違いない。
そんな中2020年はiPhone12シリーズの到来により5G通信が本格化した最初のシーズンと言ってよいだろう。
4G通信とは比べものにならない「大容量データの送受信」が可能になることや、「低遅延」や「多接続」という5Gの近未来には、今以上に大容量の通信量が必要になってくる。
それを見越して、2021年初期は、ahamoをはじめ各社『月々20GB』という通信量を上限とした料金設定が目立つ。
20GBという通信量はほんの1~2年前だと考えられないくらいの大容量であるが、5G接続となると話は別だ。
数十分~数時間もの動画でも瞬時に送受信ができる5Gの世界では、数十GBの通信量はあっという間に消耗してしまう。
そのため20GBほどの通信量でもひと月も経たないうちに消費してしまうことは目に見えている。
では契約している通信量を超過した場合どうなるのか?
2020年下期では、各社契約している通信容量を超過すると、通信速度に制限がかかる仕組みになっている。
通信速度は一律「1Mbps」に制限される。
通信速度が制限されることにより、何がおきるのか?簡単にいうと、通信はできるがデータの送受信までに少々時間がかかってしまうようになるだけ。
な~んだ。通信ができるのなら問題ないじゃない。
データの送る/受け取るということに時間がかかるだけで、通信自体ができなくなるわけではない・・・
そう理解した瞬間に、通信速度の制限に対して問題を感じないかもしれない。
しかし、通信速度が「1Mbps」に制限されてしまうことにより、とても不便になるものがある。
前置きが長くなってしまったが、今回は通信速度が1Mbpsになることで『困ること』にスポットを当てて解説していきたいと思う。
そもそも1Mbpsという通信速度がどのくらいの速さなのかを確認しておきたい。
1Mbpsという通信速度を説明するにはまず『Mbps(メガ・ビーピーエス)』という単位に触れたい。
Mbpsの『M(メガ)』は10⁶を表し、K(キロ)に換算すると1,000K(キロ)となる。
なので、1Mbpsとは、10³×10³bpsとなり1,000,000bpsとなる。
1Mbps = 1,000,000bps
次に『bps(ビーピーエス)』という通信速度を表す単位だ。
bpsは、1秒間に○bit(ビット)の量のデータを伝送するかを表した通信回線の速度を表す。
例えば1bpsなら、1秒間に1bit(ビット)のデータを送ることができる速度のことを示す。
○bps = 1秒間に○bit(ビット)のデータを送る速度
このことから、
1Mbpsという速度は、1秒間に1,000,000bit(ビット)もの大量のデータを伝送することができる速度を示していることになる。
1Mbps = 1秒間に1,000,000bit(ビット)の情報を送れる速度
1Mbpsという速度が1秒間に1,000,000bit(ビット)ものデータ量を伝送できる速度であることは理解できた。
しかし「メール」や「画像」、「動画」といわれるデータは一般的に『Byte(バイト)』という単位で表されるため、bit(ビット)からByte(バイト)への単位変換が必要とされる。
bit(ビット)をByte(バイト)へ変換する場合、8で割るとByte(バイト)に変換することができる。
(例)1,000bit(ビット) ÷ 8 = 125 Byte(バイト)
上記の例から、1Mbpsは125,000Byte(バイト)と変換することができる。
1Mbps → 125,000Byte
1Mbpsの通信速度では、125,000Byte(=125キロバイト)ものデータ量を1秒以内に送受信できる。
ということはつまり・・・
125KByte(キロバイト)以上のデータ量をもつデータを受信したり送信する場合は、1秒以内で受信できない、相手に送れないということになる。
では125KB(キロバイト)以上のデータ量をもつデータとは具体的にどんなデータなのだろうか?
また、仮に125KB(キロバイト)ものデータ量をもつデータがあったとして、そのデータを1秒以内に受け取れない、送れないとした場合、本当に問題があるのだろうか?
以下は、125KB(キロバイト)以上のデータ量をもつ具体例を用いて解説を進めていく。
日常において、1秒間に125KB(キロバイト)以上のデータの送受信が必要な場面をまとめてみた。
青文字の行為は少し困る、困るにあたる。
日頃行うこと | 困らない(○)/ 少し困る(△)/ 困る(×) |
---|---|
LINE ・メッセージ(2KB/1通) ・通話(300KB/分) ・ビデオ通話(5MB/分) | ○ ○ △ |
ツイッター(約67B/秒) | ○ |
Instagram(約233KB/秒) Facebook(約83KB/秒) | △~× ○ |
YouTube ✔ 低画質(480p以下) ✔ 標準画質(720~1,080p) ✔ 高画質(1,080~2,160p) | ○ △~× × |
Web閲覧 ・サイト(1ページ/1.6MB) ・Googleナビ(約17KB/秒) | × ○ |
国内で小学生以下の日本人を除き、LINEをまったく使わない人はいないだろう。
LINEの主な使い方としては「メッセージ」・「通話」・「ビデオ通話」のいづれかだ。
1通あたりのLINEメッセージで消費される通信量は2KB言われている。
ということは1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がついたとしても、LINEでのメッセージの送受信は1秒以内で余裕で行えることになる。
LINEを利用した通話では、1分あたり約300KBの通信量を消費すると言われている。
ということは、1秒あたり約50KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がついたとしても、余裕で通話ができる計算になる。
LINEでのビデオ通話についてはどうだろう。
LINEでのビデオ通話は、1分あたり約5MBもの通信量を消費すると言われている。
つまり、1秒あたり約83KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がついたとしても、余裕で通話ができる計算になる。
日常において、よく利用するSNSといえば以下の3つだろう。
SNSで有名な「ツイッター」では、5分間の閲覧で約20MBもの通信量を消費するとされる。
つまり、ツイッターにおけるタイムライン閲覧には1秒間で約67KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がつくとなれば、約0.5秒以内での閲覧することができる計算になる。
SNSで有名な「Instagram(インスタグラム)」は、5分間閲覧するだけで約70MB(メガバイト)もの通信量が消費されると言われている。
つまり、Instagramでは1秒間に最低でも約233KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がつくと、1秒以内での閲覧はできない計算となる。
同じくSNSで有名なfacebookに関しては、10分間の閲覧で約50MBもの通信量を消費するため、1秒間に最低でも約83KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がつくと、ギリギリ1秒以内で閲覧することができる計算となる。
今やYouTubeを一度も観ない日はない。
YouTubeでの動画視聴に必要とされる通信量は、どのくらいの画質で視聴するかよって大きく左右される。
2020年時点におけるYouTubeの画質は以下の8パターンがあり、それぞれの画質で消費される通信量が大きく異なる。
YouTubeにおいて、144p~240pの画質は「低画質」とされ、この画質の範囲でYoutubeを視聴する分には、60分間で約120MBの通信量が消費されると言われている。
つまり、1秒間で約33KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がついたとしても遅延なく動画の視聴を楽しむことができる計算になる。
YouTubeにおいて、360p~480pの画質は「標準画質」とされ、この画質の範囲でYoutubeを視聴する分には、60分間で約324MBの通信量が消費されると言われている。
つまり、1秒間で90KBの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がついたとしても遅延なく動画の視聴を楽しむことができる計算になる。
YouTubeにおいて、720p以上の画質は「高画質」とされ、この画質の範囲でYoutubeを視聴する分には、60分間で約1GBもの通信量が消費される。
つまり、1秒間で約278KBもの通信量が必要であり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限があれば遅延することは確実、高画質でのYoutube視聴はオススメできない。
日常において、スマホを使ってよく行うことといえば、Googleマップなどで場所を検索したり、通販サイトなどの情報サイトの閲覧だろう。
通販サイトや情報収集のためのWebページの閲覧はかかせない。
そうした中Googleは、Webページの1ページ当たりの適正サイズを1.6MBとしており、それは同時にWebサイト1ページ分を閲覧すると1.6MBの通信量を消費することを意味している。(ただし閲覧するWebページにデータ量が大きい画像や動画が貼られている場合を除く)。
1ページを開くまでに1.6MBの通信量が必要であるということは、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がある場合、12.8秒かかることになる。(1,600÷125=12.8秒)
行きたい場所の検索を行うとき『Googleマップ』を利用する。
1時間ほどGoogleマップを利用してナビった場合、3~6MBの通信量を消費するとされる。最大値をとり60分で6MBの通信量を消費するとした場合、1秒間で約17KBの通信量が必要となり、1Mpbs(1秒間に125KB)の通信速度の制限がある場合でも、Googleマップを使ったナビ検索は遅延なく十分に利用することができることが分かる。
こうしてスマホを使って日頃行うことを一通り眺めてみると、1Mbpsの通信速度の制限がかかれば困ることが以外とあることに気づく。
1Mbps(1秒間に125KBのデータ通信)までの通信速度制限で困ることは以下。
そうは言っても、そもそも上記3つのことを普段からやらない人にとっては、1Mbpsの通信速度制限になったとしても困るわけではない。
個人的には、日々のライフラインとなる「LINE」でのメッセージ送受信や通話が問題なくできるのならば、1Mbpsの通信速度制限は痛くもかゆくもないというのが率直な感想だ。
ドコモのahamo(アハモ)の誕生により、2020年下期から2021年の幕開けにかかて、MNOもMVNOも通信業界の価格競争の激化は一層激しいものになるだろう。
その第1弾として各社、月20GBという通信量を掲げ、超過した通信量では通信制限が1Mbpsに制限される。
この1Mbpsという通信速度制限がユーザーにとってどのくらい困るものなのか、今回は検証し解説してみた。
2021年はじめはこのような通信速度制限を各社謳ってはいるが、もちろん総務省や5Gのインフラ整備の状況次第で流れは大きく変わるだろう。
今は、各社とも若者層をユーザーとして取り込みたい一心にどんな内容の新ブランドを発表してくるのか、これからが待ち遠しく、そして目が離せない。
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